京都会館 前川國男

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9月に訪れた旧京都会館、現ロームシアター京都のお話。

前川國男により設計され1960年に竣工、50年経て再整備されて2016年に再オープンしました。
主な整備内容は、国内最大級のオペラハウスを備えるべくメーンホール部分の建て替えと、中庭側の屋外歩廊テラスの屋内化。
ただ、市民にとって行政のとったその方針決定の手順があまりに冒涜に感じられ、5年前に反対運動が巻き起こりました。
平安神宮のある岡崎地区の風致をまもるべく絶対高さを抑えていたのに、特例で局所的に高さ制限が緩和されたことは特筆すべきことで。
けれど、管理を直接的に担っている行政の立場からすると、維持管理のための財源が気になるところ。
景観(伝統)より商業(革新)を優先にならざるをえない部分があると判断されたのが伺えます。
個人的には、行政側の思惑を理解しつつも原形をそのまま保持して利活用して欲しかったなと。本当に勝手なのですが、京都にしかできないことってあると思うので。
以前出版イベントで都築響一さんが、観光地化されて京都がずいぶんかわってしまった、良かった京都の風情はだいぶ減ってしまったと嘆いた発言を思い出しました。
このあとまた同様なことが一つまた一つとつみかさなり、気がついた時にはぜんぜん変わっていて大事なものを失っていたということを危惧しています。
日々の忙しさとともに、自分自身アホなので想像力の欠如でふーんとスルーしてしまい、後になってコトの重大さに気づく。
アイデンティティといえる自分の原風景、後世にも長く残したいモノが何かまずは意識することだけでもしたいなと。まずは自分の住む街について。

さてさて、建築自体のお話。
建築デザインの特徴として、プレキャストの屋根やバルコニー手摺をもちいて水平方向を強調するデザインにより、外部の風景とのつながりをもたせようとされたんだなと。
また、屋根や手摺の力強い形態は、歴史を意識させる社殿をモチーフにしたであろうことが伺えます。
そして、単に歩くというプロムナードでなく、たたずんだり、座ったりということも含んだエスプラナードと前川さんが発言された雰囲気の一端を感じることができました。利用している人の様子をみていて。

ところで前川さんの晩年は、グローバリズムとは逆行、軽いよりも重い雰囲気があり当時の時代の流れに乗っかれなかったようです。どうも、コルビュジェや丹下さんとの比較、後年レンガを多用したことでクラフト的で保守化・退行した人という烙印を押されてしまったようで。また、豊かであろうのに素朴な雰囲気と非常にわかりにくい構成の建築であることもあってメディア受けしにくかったように思われます。ただ、時代がかわりローカリズムにむかっている昨今、前川建築にスポットをあててみても良いのかなと思っています。地味な存在かもしれませんが。。。
京都会館の一部に、別の用途(飲食、書店)が入ったことで、ホールでイベントが開催される以外でも日常利用がしたくなるというのは非常によかったことだと思いました。
気候が良いときはオープンテラスでお茶をするのに最適な空間がすでに備わっていた賜物かと。
今後、東京文化会館、熊本県立美術館の再訪、岡山美術館の見学にも是非とも行き、嘗て公共建築の教科書といわれた前川建築を感じたいなと思います。

参考文献: 前川國男 現代との対話  編:松隈洋
     京都会館再整備基本計画
     岡崎地域活性化ビジョンの実現に向けた都市計画制限等の見直し素案について
     「岡崎地域活性化ビジョンの実現に向けた都市計画制限等の見直し素案」に対する意見書
     京都会館保存要望書 DOCOMOMO Japan